軽架線システムのための架線張り解説(1)

軽架線システムのための架線設置の手引き

 

 

このところ雨の降る日が続いています。山に入ることもままならず、他方でオンライン対応の需要も増えているように思われますので、いわゆる「現場対応」でポイントになるようなお話をネット上でご紹介できないか、、、それがこれを思いついたきっかけでございます。

 

日本は山が急峻で、大型重機を入れる道が付けられません。

立派な道を作ると治山・治水上も問題が出てきます

いずれ道を広げず、あるいは道から離れた材を長距離運搬する必要が出て参ります。それに応えられるのはいずれ進化めざましいドローンになるかもしれませんが、今は架線による方法も大事です。

 

架線も技術進化がありました。スイングヤーダが代表的ですが、やはり7トン以上の重機を入れようとすると広い道が必要になります。スイングヤーダはなんといってもシステムが高額なので、資金がないと参入できませんし、当事者になれば当たり前でしょうが投資回収のために大規模な運用に走りがちです。しかし山にとってあまりよい未来が描けません。

 

規模を求めざるを得なくなった林業のコアの世界にいらっしゃる方々はそんなジレンマを抱えていると思います。

 

 

 

■ お読み頂きたい方

 

 

ところで、これをお読みいただきたい方は、林業のコアに近づけていない方々です。

そんな方々も、大型重機が活躍する林業現場の動画をYouTubeで見て興味をかき立てられながら、当事者としてはどこから始めるべきかと、別のジレンマを感じておられましょう。実際、林業のコアは既に業務の大規模化が進んでおり、目の届く範囲も狭くなってしまっています。自然に囲まれて仕事をしたいのに、です。

 

軽架線システムは、コアの世界から見ると傍流で、使っている機材は軽装で、ハイテクなものはありません。

ですがこれから集材を経験するには、大型重機を使わないので設備負担が小さく、原理も分かりやすいのでお勧めです。

 

規模を追わない小さな林業を担う方々へ

 

農業の片手間で始められないか、林産業(キノコ、薪炭)を始められないか、里山の整備(倒木処理)ができないか、など軽架線システムの応用範囲はいろいろあります。林業のコアに入らずとも、周辺には様々な「山仕事」がございます。

 

まずは次の図をごらんください。

チェンソーで伐った木をどうやって道のあるところまで運ぶか?を考えていただけるとイメージしやすいかもしれません。

 

 

■ 軽架線システムとは

 

軽架線システムは、ざっくりとしたイメージで表すとこんな具合です。

立木を架線(ロープ)で繋ぎ、動力で材を運ぶ、、、イメージでしょうか。

 

とはいえ、初めての方にはこれでも複雑に見えるかもしれません。

架線=ロープ(厳密には空中に張ったロープ)のことです。

電車の架線のように電気が走っていそうに誤解されるかもしれませんが、こちらの架線には電気は走っていません。

 

軽架線システムは、一般に「軽架線集材」と呼ばれているとおり、それを行うための架線システムを指しています。

また軽架線集材は、集材方法の1つである架線集材の方法の1つです。架線集材としてはいちばん単純な方法です。

 

業務体系として捉え直すとこんな関係になります。

 

 

1.林業の業務 >2.集材業務 >3.架線集材業務(架線による集材) >4.軽架線集材(架線の中でいちばん単純)

 

 

【追加解説】1~4を言い換えますと、

1=世間相場で一番不人気な部類といわれる仕事ですが、木を伐倒するとスカッとするような面もあります。

2=スカッとした見返りに、残った面倒な仕事が集材です。トラックに載せる所まで木を運ぶ仕事で、身体負荷も危険も多いです。

3=重機を使い、機械の腕を伸ばして集材する方法(車両集材)もありますが、道を付けられない所は架線で集材します。

4=架線を設置するのは大変で、技術者もめっきり減ってきているようです。それを単純にできる範囲に収めているのが軽架線です。

 

 

 

■ 軽架線システムの構成要素

 

軽架線システムを実現するにはいくつかの資機材が必要になります。

構成要素として示すとざっと以下のものが必要になります。

 

 

  • 固定索 1本

固定索はその名の通り固定されたロープで、鉄道で喩えるとレールの役割を果たします。

これ自体に動力はありませんが、搬器や荷の運動の軌道をなしてくれます。

固定索は主索、本線と呼ぶこともあります。

また空中で荷を支えることからスカイラインと呼ぶこともあります。

 

  • 動索 1本

荷に動力を伝達するためのロープです。

したがって動索の一端は、荷につながります。

もう一端は動力につながります。

 

  • 動力 1つ

動索に動力を伝えます。

ここで使用する動力は、ロープを巻き取るドラムを備えたものです。

 

  • 搬器 1つ

固定索によって空中に支持され、荷の運動制御を行います。

これ自体に動力を持ちませんが、動索から伝わる動力を機械的(滑車などの原理によって)に制御しています。

よって、搬器の中を固定索と動索が通過します。

 

※軽架線システムにおいて、搬器の運動制御の方法はさまざまなので、ここでは詳細を省かせていただきます。

先の図のHANAKO(森の機械製)も搬器の1つです。

 

以上、軽架線システムの構成要素として列挙させていただきました。

 

 

 

■ 何が単純なのか

 

軽架線システムの何が単純かというと、「動力が1つ」という点です。

これこそ軽架線システムの定義といってもかまいません。

 

軽架線って何ですか? と言われたら、「動力1つで行う架線」と答えてよいでしょう。

架線=ロープの関係でいうと、動力を伝えるロープ(動索)が一本だけ、という意味になります。

 

動力が1つというのは大きなメリットで、仕事を始めるハードルがいっきに低くなるのです。

2つと1つとではシステムの複雑さが大きく違うというのが理由です。

 

 

【追加解説】

あいにく架線集材といえば、動力を2つ以上組みあわせて使うのが既に一般的になっています。

理由があってそうなっていますが、例を挙げますので問題点をご理解ください。

 

○スイングヤーダ(動力2つ)

荷を前側と後側から同時に引っ張りながら地面から浮かせて運びます。2つの動力を電子回路で同調するように制御しているので、運転は簡単になります。しかし機械がとても高価です。また大型重機がベースマシンになるので、広い道が必要になり、寄りつきの悪さが急峻地形における大きな制約になります。

 

○エンドレスタイラー方式の架線集材(動力3つ)

3つの動力がそれぞれ、「荷を昇降する」「荷を前後に移動する」「荷掛け地点までフックを動かす」仕事に割り当てられています。マニュアルで動力を操作して行っていますので、運転に高い技量が求められます。それを教えられる人に出会うのがますます難しくなっています。

 

一度この業界に入ってしまえば、これらが普通の方法になるのですが、「動力が2つ以上」になるとシステムがいきなり複雑になり、費用や技量の面でハードルが高くなることがお分かりになるのではないでしょうか。

 

ひるがえって、軽架線システムは動力が1つのため

 

・設置が簡単

・設備投資も少ない

・メンテナンスも楽

・動きが目に届きやすく想像もしやすい

 

というメリットがございます。

 

 

■ 地引とも違います

 

念のため、動力1つで行う集材には、「地引(じびき、地曳とも)」があります。

ただしこれは架線を使わない方式です。

架線を使わないので、材を浮かせず、完全に地ベタを引きずって集材する方法になります。

よって地引集材は株などの障害物があると立ちゆかなくなることがあります。

 

改めて、架線とは厳密には「空中に張られたロープ」をいいます。

空中に張られたロープで荷を垂直方向に支え、地面の抵抗や障害物を回避する目的が込められています。

つまり架線を使うことで、浮かせた状態で荷を運べるようになるのです。

 

くどくなりました。

 

軽架線は地引のようで地引ではありません。

改めて、軽架線とは「動力1つで行う”架線”」と申し上げておきます。

 

 

■ 解説内容の予定

 

現場起点で、現場での作業の流れに沿って、「架線設置」の範囲で解説する予定です。

できる限り挿絵をつかい、技術的な要所を分かりやすくするつもりです。

何回かに分けて、各回の分量も多くならないようにいたします。

項目も変更があるかもしれませんので、どうかご了承ください。

 

1.地形を確認する

 地形によって軽架線システムの適性がきまります。

 

2.支柱を決める

 索張り(ロープを張る)に使用する立木・株に見当をつけます。

 

3.集材路を伐開する

 残すべき支柱(立木)に気をつけて伐採し、集材路を開けます。

 

4.固定索を設置する

 固定索(主索、本線)を支柱に設置します。

 支柱に大きな力が働きますので、転倒予防索も含めて解説します。

 ここが一番、面倒ですが大切なところです。

 

5.動力、動索を設置する

 

以上のとおりで、搬器の設置や、運転(集材業務)の手順などは含まれません。

 

弊社は搬器メーカーとして、以降の範囲については製品に特化した形での解説を、別途行わせていただきます。

 

 

 

以上は序でした。


以下本編です。ここから始まりです。

 

 

1.地形を確認する

 

架線集材は地形の影響を大きく受けます。

地形によって架線集材の適性が決まります。

 

地形はどうにも変えられませんので、最初に地形を確認しておきます。

後に続く支柱の見当付けも、地形に基づいて行われます。

 

地形の大きなポイントは傾斜です。

傾斜すなわち集材方向が「下げ荷」か「上げ荷」かで、リスクが大きく変わってきます

 

 

 

■ 下げ荷となる傾斜

 集材の目的地となる土場・道が谷側にあるケースです。

 

下げ荷方向の集材は、材が地面から離れたときに暴走(滑落)する危険があります。

牽引方向と重力方向が一致するため、株などにひっかかって力を貯めてしまうと、解放されたときに材がいきなり飛び出し、減速せずに谷側に落ちてきたりするので、事故に発展するリスクがあります。

とくに、20°を超える斜面は要注意です。

 

【対策】その上で、とるべき対策は。

谷側での作業がとても危険なので、立入禁止エリアや退避エリアを事前に決めておくことは最低限必要になります。

また可能であれば、材の暴走(滑落)抑止などの仕組みを架線や搬器に事前に取り入れておくことも大事です。

 

そして架線への適性という点で、地形(地面の形状)が凹型か凸型かも大事なポイントです。

 

 

このように凹型の地形になっていると、架線集材しやすくなります。

なぜかというと、架線を地面から十分に離して張ることができるからです。

なかでも固定索(または主索、本線とも呼びます)は、荷を地面から浮かす支持力を伝えるロープです。

荷を掛けた状態は当然のことながら、架線自体も重力で垂下しますので(垂れ下がる)、地面からの距離を保持するうえで、凹型になっていることは大事なポイントです。

 

 

逆に凸型の地形はどうでしょう。

架線が地面に近づいてしまいますので、架線集材には不向きです。

垂下(垂れ下がり)する分もあるので、なおさらです。

 

地面との距離を確保するために架線の取付位置を高くするのはお勧めできません。

取付位置が高くなると作業が大変になり、また支柱となった立木が倒れやすくなります。

テコの原理で、小さな力でも立木を倒すことに発展しかねませんので、架線を高くすればよいというものではありません。

 

それでも架線を使うということであれば、間に支柱を立てて、地面との距離を確保するようにします。

荷の上げ下ろしが増えますが、支柱を増やせば確実に長距離を運ぶことができます

 

 

■ 上げ荷となる傾斜

集材の目的地となる土場・道が山側にあるケースです。

 

上げ荷では下げ荷のような暴走事故が起きにくいといえます。

牽引方向と重力方向が拮抗するためです。

そのため、安全に行えるのが特長になっています。

経験の浅い方の立場にたって優先順位を申し上げるなら、上げ荷の斜面を優先すべしとお勧めします。

 

しかし道がついておらず上げ荷ができない林で上げ荷を行うには、道を林の上方まで延ばす必要があります。

元から作られていた道ならともかく、集材をするためにわざわざ道を作るのはいかがなものでしょう。

道を作るにはバックホウなど重機も必要になります。

設備投資がいきなり増えてしまいますね、、、

 

(余談)

日本には放置林が多いと言われます。

地形が急峻なので、なかなか道を付けづらいこともあり、植林された人工林も、道の下(谷側)には少なく、道の上(山側)に広がっていることが多くあります。下げ荷が危険な作業のため、上げ荷に比べて後回しになってきたことも、人工林を放置する背景になってきたように思われます。放置林と集材技術の問題はきっと深い関わりがありましょう。

 

さて、架線への適性という点で、地形が凹型か凸型かは重要なポイントです。

下げ荷のケースと同様です。

 

 

下げ荷での解説と同様です。

凹型の地形になっていると、架線集材しやすくなります。

架線を地面から十分に離して張ることができるからです。

 

 

 

逆に凸型の地形はどうでしょう。

架線が地面に近づいてしまいますので、架線集材には不向きです。

 

 

それでも架線を使うということであれば、間に支柱を立てて、地面との距離を確保するようにします。

荷の上げ下ろしが増えますが、支柱を増やせば確実に長距離を運ぶことができます

 

 

 


 

 

今回はここまでです。

序文があったので長くなりました。

 

次回(2)の予定は「支柱を決める」ことについてです。

どうかお付き合いください。

 

お付き合いくださいましてありがとうございました。