軽架線システムのための架線張り解説(6)

本解説(1)〜(9)を全てまとめ、PDFにしました。

内容も改訂していますので、よろしければこちらをご覧ください。

6.固定索の設置 - 元柱に掛けアンカーに繋ぐ

 

今回は、固定索(主索、本線とも呼びます)のもう一端の固定方法についてです。

固定索のもう一端は、元柱を経由してアンカーに繋ぎます。

またアンカー側にはウインチを取り付け、固定索を緊張させたりゆるめたりできるようにする仕掛けも同時に行います。

新たな資機材が必要になりますので、順を追って説明します。

 

■ 仕掛けをする

 

まずは必要な資機材を揃え、配線作業を行います。

高所作業もありますので、注意して行ってください。

 

図は拡大可能

 

① 元柱にベルトスリングを巻き、オタフク滑車を付ける

垂れ下がったベルトスリングのアイが、真横になる(元柱からみて、固定索と直角方向)ようベルト位置を調整してください。

※固定索が緊張したときに元柱に擦れず、かつシーブ(滑車の車)から外れないようにするためです。

オタフク滑車がぶら下がった位置が、固定索の元柱側での高さになります。

ラダーを使用する場合は、安全帯をつけてください。

 

② オタフク滑車に固定索を通す

通したら、固定索の先端部をしっかり地上まで下ろしておきます。

 

 

次はアンカー側の作業に移ります。

アンカーに選んだ支柱が、固定索の経路(先柱~元柱)に対してまっすぐに位置しているか確認してください。

 

③ アンカーにベルトスリングを巻く

垂れ下がったベルトスリングのアイが、元柱に正対する(向かい合う)方向になるようベルト位置を調整してください。

ベルトスリングの取り付け位置は、力がかかってもアンカーが倒れる心配のない、地上近くの高さになります。

この高さでチルホールによる作業が行われることになります。

 

④ チルホールにチルワイヤーを通し、ベルトスリングに掛ける

チルホール(本体)についたフックがベルトスリング(アンカー側)に、チルワイヤーについたフックが元柱側に向きます。

このようにフックが2つありますので取り付ける相手に注意してください。

 

⑤ 固定索にキトークリップを掛け、チルワイヤーのフックを繋ぐ

固定索の端を取り、キトークリップを抱かせます。

チルワイヤーのフックを取り、キトークリップの輪っかに掛けます。

キトークリップには向きがあります。

片方向にのみ抵抗が働き、反対方向は無抵抗に抜けていきますので向きに注意してください。

 

なお、固定索の余尺は切らずに巻き取って(束ねて)PPロープなどで整理しておくようにします。

切断する場合には、ワイヤーロープカッターが必要になります。

 

以上で仕掛けが完了しました。

 

 

【注意】資機材のサイズについて

 

 

 

【チルホールの使用荷重】

固定索を緊張させた状態では、固定索に荷が掛かると、荷重の5倍の張力が固定索に伝わるとお考えください。

たとえば100kgの荷重がかかると5000N(500kgf)の力がチルホールにかかってきます。

チルホールの製品は使用荷重によってサイズが分かれています。

運ぶ材の荷重をふまえ、荷重の5倍以上の使用荷重が表記されているものをお使いください。

 

【チルワイヤーの長さ】

チルワイヤーにも長さのバリエーションがあったりします。

ここで行う固定索の緊張にはせいぜい数メートルがあれば十分です。

※長いものは送り出しの手間(チルワイヤーのフックを所定の位置にセットする作業)もそれなりにかかりますのでご留意ください。

 

 

【キトークリップのサイズ】

ワイヤーロープの径によって使えるキトークリップのサイズが異なります。

ここでは固定索の径に合わせてキトークリップを選んでください

Φ9㎜の固定索の場合、Φ8~10(㎜)と表記されたものは良いですが、Φ10~12と表記されたものは使えません。

ロープ径に対して大きすぎるキトークリップは、ツメが十分掛からず抜けてしまいますので、使用しないようにしてください。

 

 

 

■ 固定索のたるみを取る

 

仕掛けができたら、固定索のたるみを取り、チルホール作業(固定索の緊張)のスタンバイ状態を作ります。

軽い張力(人力程度の張力)がかかっているほうが、キトークリップ(のピン)が外れにくいというメリットもあります。

 

 

⑥ チルワイヤーの引き出し長さを確保する

チルワイヤーの引き出し長さ(チルワイヤーのフック~チルホール本体)は、固定索を緊張させるために使われます。

固定索の経路長(先柱~元柱)によりますが、ここで行うたるみ取りの作業を事前に行っておけば、3~4mあれば十分です。

この間隔は固定索の緊張とともに縮まります。

 

元柱~アンカーの間隔について

改めて、ここで行うチルホール作業が行えるだけの間隔があるか確認してください。

元柱~アンカーの間隔 > 引き出し長さ+1m(最短でも) となるようにしてください。

この間隔が不足すると固定索をしっかり緊張できませんので、その場合はアンカーを選び直す必要があります。

 

⑦ 固定索のたるみを取る

チルホールが牽引モード(解放(フリー)状態ではなくなっている)にあることを確認し、キトークリップを掴んで固定索のたるみを取ってください。

 

 

⑧さらに体重をかけてたるみを取る

ある程度たるみが取れたら、キトークリップから手を放し、両手で固定索の端をつかんでたるみを取ってみてください。

立ち位置を変え、元柱方向に体重を載せる感じで引っ張ると、固定索のたるみが一層取れて、全体的に空中に上がってきます。

 

⑨スタンバイ確認

この状態で、チルホールを漕いでみて、固定索に十分な緊張状態が得られるか確認してみます。

 

以上で固定索の設置が(とりあえず)完了しました。

 

チルホールとキトークリップは、この架線でのプロジェクトが終了するまでここに常設されることになります。

固定索の緊張・弛緩状態は、状況を見てチルホール操作で変更してください。

 

【雨天対策】

日をまたがる作業を行う場合(たいていの場合は、1日で完了することはありません)、作業日ごとに雨天対策としてチルホールにはブルーシートを被せておくようにします。

 

 

 

■ 資機材リスト

 

以上、固定索を元柱に掛けてアンカーに繋ぐ作業についてご説明しました。

この作業に関して、使用する資機材は以下のとおりです。

 


 

今回はここまでです。

次回(7)は、「控索で元柱を補強する」ことについてご説明する予定です。

 

お付き合いくださいましてありがとうございました。

 

なお前回ブログをご覧になりたい方は以下にございます。 

 

軽架線システムに適した地形について説明しています。

 

 

架線張りに使用する支柱(立木、株)について説明しています。

 

 

集材路の伐開について説明しています。

 

 

固定索を先柱に取り付ける方法について説明しています。

 

 

控索で先柱を補強する方法について説明しています。

 

どうか合わせてお読みください。