軽架線システムのための架線張り解説(9)

本解説(1)〜(9)を全てまとめ、PDFにしました。

内容も改訂していますので、よろしければこちらをご覧ください。


9.動索を引き回す

 

今回は、動索を引き回すことについての説明です。

架線設置のための、搬器設置を除いて最後の作業になります。

高所作業がありますので、気をつけて行ってください。

 

■ 手順

 

動索を通すブロック(滑車)を経路上にある支柱にとりつけ、動索を①、②、③の順に通します。

通し終わったら、いまいちど動力が最初のブロック(滑車)に正対(まっすぐに向かい合う)しているか確認します。

 

 

①ドラムをフリーにして動索を引き出す

クラッチやブレーキのかかる動力はフリーにして行ってください。

 

②向柱の滑車を通す

向柱を使う場合は、向柱にベルトスリングで滑車を取り付け、動索を通してください。

なお、動力と正対させる関係で、滑車(ベルトスリング)の取り付け高さは地面に近いところにします。

取り付け位置が高いと、動索に張力がかかったときに動力が仰向けに浮いてしまうことありますので注意してください。

※地面に置かないタイプの動力(例:ロープウインチ)はこの限りではありません。

 

③元柱の滑車を通す

元柱にベルトスリングで滑車を取り付け、動索を通してください。

 

【動力が正対していることの確認】

動索に張力がかかると、ベルトスリングの余尺の分だけ滑車が支柱から離れます。すると動索の軌道が変わります。

動索の軌道は、厳密には支柱を結んだ線ではなく、滑車を結んだ線になりますので留意してください。

このような現象をふまえ、「動力が最初の滑車※に正対している」ことを確認し、正対が保たれていなければ動力の向きを修正してください。

※図では最初の滑車は向柱の滑車です。

 

 

■ 必要な動索の長さ

 

動索のロープを新規に購入される場合は、この軽架線システムで必要な長さを事前に概算しておくと良いでしょう。

以下のように、最奥にある材を集材することを想定して計算します。

なお、ロープ材質(ワイヤーか繊維か)は動力(機械)の仕様に従います

 

 

例えば、「横取り長8m、経路長50m、元柱~動力の長さ20m、余尺5m」なら、必要な動索の長さは83mです。

ショップ等でのご購入はたいてい50m単位が多いので、100mのロープを購入します。

このままドラムに巻き付けてお使いになってもかまいませんが、余尺が長すぎてドラムが乱巻きを起こす懸念がありましたら、使わない長さを切って使ってください。

 

 

■ 動索の使用荷重

 

これまでの説明は、固定索に径Φ9㎜のワイヤーロープを使ったケースを想定して行ってきました。

動索にワイヤーロープを使用する場合は、径Φ6㎜程度のものが軽くて取り回しもよく、使用荷重としても十分な強度が得られます。

Φ6㎜のワイヤーロープの使用荷重は、概ね破断荷重が1.8トン(18000N)です。

動索の安全係数=6※として、使用荷重=1.8トン/6=300キロ(3000N )程度を上限とした運用が可能になります。

 

繊維ロープの場合はこの限りではありません。

材質によって強度が大きく異なりますのでご注意ください。

破断荷重のみ記載されている場合には、安全係数を6として使用荷重を見積もってください。

 

※安全係数:この軽架線システムで使用する動索は、巻き上げ(リフティング)の作業も行う関係で安全係数=6としました。

 

 

■ 資機材リスト

 

以上、動索を引き回す作業についてご説明しました。

この作業に関して、使用する資機材は以下のとおりです。

 


 

今回はここまでです。 

お付き合いくださいましてありがとうございました。

 

なお前回ブログをご覧になりたい方は以下にございます。 

 

軽架線システムに適した地形について説明しています。

 

 

架線張りに使用する支柱(立木、株)について説明しています。

 

 

集材路の伐開について説明しています。

 

 

固定索を先柱に取り付ける方法について説明しています。

 

 

控索で先柱を補強する方法について説明しています。

 

 

固定索を元柱とアンカーに取り付ける方法について説明しています。

 

 

控索で元柱を補強する方法について説明しています。

 

 

動力の設置について説明しています。

 

どうか合わせてお読みください。