単引きの限界と危険

 

軽架線による集材は、単引き(動力1つ)で済むため索張りが簡単という大きなメリットがあります。ここでは模型を使って、単引きによる集材にどんな限界や危険があるのかをお見せします。

※単引きでの荷のふるまいは傾斜の大きさ、搬器の有無、倍力の使い方によって異なります。

 

このような模型を使ってお話したいと思います。

斜面は30°です。これぐらいの傾斜の山は日本では普通ではないでしょうか。

まずは搬器を使わずに

上げ荷 単力 搬器なし

上げ荷を搬器なしで単引き(動索1本)で集材してみます。

搬器がないと、木口が切り株などの障害物にぶつかってうまく運ぶことができません。

 

※「単力」とは荷にそのまま力を伝える方法で、後に出てくる「倍力(滑車を使って力を倍にする)」方法との対比で表現しています。


下げ荷 単力 搬器なし

下げ荷ではどうなるでしょうか。

上げ荷と同様、搬器がないと木口が切り株に遮られます。強引に動索を引き続けると荷は飛び出して落下することがあり危険です。


では搬器を使って端を上げられないか

上げ荷 単力 搬器あり

切り株を避けて運ぶためには、端(はな)を上げる必要があります。そこで空中に固定索を張り、搬器を介して荷を牽引してみます。ごく簡単な搬器で、上の滑車が固定索に乗り、下の滑車が動索をガイドしています。固定索の支持力を得ながら、単力で荷を引くことができます。

 

しかし結果はだめでした。搬器が逃げてしまい、端はあがりませんでしたので荷は切り株にぶつかって前に進むことができませんでした。「搬器が逃げる」とは、動索を引くと搬器が動いて荷の真上から居なくなってしまう現象です。搬器が逃げると上向きの力が弱くなってしまい、荷を持ち上げることができなくなります。

 


下げ荷 単力 搬器あり

下げ荷ではどうでしょうか。

やはり搬器が逃げてしまい、端があがらず切り株にぶつかって前に進むことができません。

下げ荷では上げ荷よりも搬器がより大きく逃げてしまうことも分かります。

 

以上のとおり、単力では端が上がりません。


倍力にしないと端は上がらない

上げ荷 倍力

ではどうしたら端を上げることができるでしょうか。

 

倍力のしくみを使うと搬器の逃げを抑えられ、端を持ち上げて運ぶことができます。倍力は動滑車を使えば実現できます。動画では荷に直接つながっている滑車が動滑車です。この動滑車が動索の張力の2倍の力で荷を引くため、端を上げて運ぶことができるのです(解説はあとで)。

 

倍力にすれば端を上げられ、上げ荷では有効です。

 


下げ荷 倍力

下げ荷でも倍力は有効でしょうか。

 

下げ荷での倍力は危険です

下げ荷の場合、端は少し上がりますが、上げ荷のときほどではありません。うまく切り株をかわせば前に進んでいくことができます。しかし問題は荷が暴走してしまうことです。切り株や地面との摩擦を失うと重力で飛び出して来ます。


水平移動 倍力

倍力のしくみはどこまで有効なのでしょうか。上げ荷と下げ荷とでは様子が違ったように、傾斜の大きさによって端の上がる高さが異なるようです。

傾斜がない地形の場合はどうでしょうか。やはり下げ荷のときと同様、端は少し上がりますが十分とはいえません。

 

以上を要約すると、 

倍力のしくみは、上げ荷の場合に有効ですが、水平移動~下げ荷の場合には有効ではないようです。


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【解説】倍力にするとどうして単引きでも端が上がるのか

単力と倍力とでは搬器の位置が違う。

倍力のしくみは上げ荷のときに端上げ(はなあげ)に有効だと分かりましたが、その理由を整理しておきましょう。

搬器は固定索上で、力の釣り合うところまで移動します。釣り合う位置が、単力と倍力とでは異なります。それは図の張力※の大きさが異なるからです。


搬器はOの位置、荷はPの位置にきます。

 

単力(倍力を使わないとき)では、動索の張力Tと荷を上げようとする張力※Tが等しいために、2つの合成力(OPとOP')を結んだ線(PP')が大きく倒れて固定索に並行になろうとします。搬器が逃げる(荷の真上から離れていく)のはこのためです。

 

ちなみに、搬器の重量Mが小さいほどこの傾きは大きく、PP'は固定索と並行になるまで近づいていきます。林業用の搬器がやたら重い理由の1つはこれでしょうか。。。

 

逆に搬器を重くすれば搬器が逃げることはありませんが、荷と同じかそれ以上の重さにしなければいけなくなりますので、良い解決策とはいえません。


同じく、搬器はOの位置、荷はPの位置にあると考えてください。

 

倍力のときは、荷を上げようとする張力※が動索の張力の2倍になります(言い換えれば、動索の張力が半分ですむ)。2倍になるのは動滑車を使って荷を掛けているためです。2つの合成力を結んだ線(PP’)は単力のときのように傾かないので、搬器は荷の上に留まろうとします。

 

倍力のときはこのおかげで、張力が端上げに有効に働きます。


用語が多いので改めて整理しておきますね。

  • 単引き:動力(動索)1つで荷を引く。単胴(ドラム1つ)とも言います。
  • 単力:荷に動索の力をそのまま伝える。倍力との対比。いうなれば「1倍力」。
  • 倍力:荷に動索の力を動滑車を使って倍にして伝える。単力との対比。
  • 固定索:搬器を支持し、動索の力を上向きに変えるロープ。主索または本線とも言います。
  • 動索:動力を伝えるロープ。作業索ともいいます。
  • 搬器(はんき):荷を地面から離して運ぶ用具。複数の滑車と複数のロープを使います。

 


動力を2つ使えば安全な下げ荷が実現する

ここまで単引き(動力1つ)の限界と危険を整理してきましたが、要約すれば「単引きでの下げ荷は、端上げができても荷の暴走を止められない(安全な下げ荷ができない)」ということです。

 

しかし動力を2つにすればこの問題を解決することができます。既存の技術でそれを実現しているのが簡易架線集材方式といい、軽架線の下げ荷の問題をクリアしました。代表的な機械はスイングヤーダです。スイングヤーダは高性能林業機械の1つで、2本の動索を機械的な制御によって拮抗させながら荷を動かしますので、下げ荷においても荷が暴走することがありません。

スイングヤーダのしくみ

スイングヤーダは2本の動索を使っています。上側に張られた動索(青色)がホールバックラインで、先柱で折り返して滑車につながっています。下側の動索はメインライン(ホールライン)で、荷に掛かっています。2つの動索の張力を拮抗させることで荷を空中に上げ、その状態を保ちながら荷を移動させることができます。

 

この動画は上げ荷の様子です。


下げ荷の場合も動きは同様です。

 

スイングヤーダを使えば荷が上がって地面との摩擦が失われても荷の後ろからホールバックラインが支えているため、荷が暴走することはありません。



スイングヤーダと同じ動きを動力1つ(単引き)で実現。弊社の提案=HANAKO 300

安全な下げ荷の解決方法としては、簡易架線方式、すなわちスイングヤーダだけが安全な下げ荷の解決方法ではありません。架線集材で実績のあるエンドレスタイラー方式も安全な解決方法です。そしてエンドレスタイラー方式は通常3つの動力で構成されていますので、索張りが複雑になります。

 

 

しかし安全な下げ荷のためには複数の動力が絶対に必要なのでしょうか。スイングヤーダは高価ですし、エンドレスタイラー方式は索張りが複雑です。

 

弊社HANAKO 300は単引き(動力1つ)でこの課題を解決しました。HANAKOは独自の制動機能により、単引きで横取り・下げ荷・上げ荷ができるように開発した搬器です。