· 

繊維ロープをつかむ方法

繊維ロープをつかむ方法

 

「プルージック結び」「もやい結び」の組み合わせで、繊維ロープをクリップする(つかむ)方法を紹介します。

 

 

【ポイント】

  • ワイヤーロープであればキトークリップやカムラーなどの金具を使ってクリップしますが、繊維ロープの場合は金具が繊維を傷めるリスクがあるため、ここでは使用しません。
  • プルージック結びは、巻き数を通常より多めにして主索との接触面積を増やし、主索への応力集中(損傷の原因)を避けます。
  • もやい結びは、主索から受ける張力に耐えられるよう、2本束ねた状態でアイを作成し、金具(ウインチ側)との接触面積を倍増させます。

 

【用途】

  • 主索に繊維ロープを使用した場合、これを手動ウインチなどで強く緊張させる際に有効です。
    ※主索=固定索、本線、親綱とも呼びます
  • 他、キトークリップなどのクリップ(半固定)機能を繊維ロープに果たす場合全般に有効と思われます。

 

この例で使用する主索はダイニーマΦ12ミリ(破断強度16tf)です。

固定用ロープは芯材がダイニーマ、外皮がポリエステルの繊維ロープΦ8ミリ×3m(最低2m)、破断強度2.7tfです。主索に比べて強度が小さいですが、この太さのロープとしては最強クラスのものを使用しています。

 

 


1.プルージック結びで主索を固定

固定用ロープを真ん中で二つに折ります。

 

【ポイント】

プルージック用ロープは市販されていますが、ここでは強度を出すため、芯材ダイニーマ・外皮ポリエステル(ダブルブレード)からなるΦ8ミリロープ×3m(余尺を考えなければ2mでも可能)を切り分けて使用しています。

 

 

左手で固定用ロープの真ん中をつかんで主索の上越しに置き、口を作ります。

 

 

【1巻き目】固定用ロープの二つの端を手前側から口に入れ、主索に巻き付けます。

 

 

【1巻き目】確認のため、左手を放すとこうなります。ですが左手を放す必要はありません。

 

 

【2巻き目】再び左手で口をつくり、固定用ロープの二つの端を手前側から入れ、主索に巻き付けます。

 

 

【3巻き目】同様に繰り返します。

 

 

【4巻き目】同様に繰り返します。

 

 

【5巻き目】同様に繰り返します。

 

 

【5巻き目】左手を放します。これでプルージック結びは完了。

 

一般的に3〜4巻きが多いようですが、ここでは主索へのダメージを少しでも和らげるため5巻きにしています。巻き数の加減は各自のご判断で。

 

 


2.もやい結びでアイを作る

ここでは固定用ロープの強度を高めるため、2本束ねた状態でもやい結びをします。

最初に左手で小さな輪っかを作ります。

以下、①〜⑥を上・下が交互になるよう続けます。ここでは①が上。

 

 

大きな輪っか(これがアイとなる)をつくり、②下→③上となるよう、小さな輪っかに端をくぐらせます。

 

 

固定用ロープを持ち直し、④下となるようにします。

 

 

手前側に折り、⑤上→⑥下となるよう小さな輪っかに入れます。

以上、①が上で始まる流れでした。①が下で始まる場合は、⑥までの上下も全て反対になります。

 

 

元側と端側を両手で引き合うと小さな輪っかがしまっていきます。

【注意】このとき大きな輪っか(アイ)もつられて小さくなってしまいますので、写真のように端側と大きな輪っかを束ねて引くと大きな輪っかが小さくなりません。

 

 

もやい結びが完成(大きな輪っかがアイになった)。

このアイを手動ウインチに掛けることで、主索をしっかり緊張させることができるようになります。

 

 

【オプション】

このアイにフックを直接掛けると接触面の状態によってはロープを傷めることがあります。その恐れがあるときは、シャックル(大きめ)を付けることで、接触面の応力集中を分散します。

 

 


3.固定位置を変える

プルージック結びを緩めれば、固定位置は左右どちらにもするっと動かすことができます。

ウインチの揚程などの都合で固定位置を簡単に変えることができます。

 

 

再び端側を引っ張るとプルージック結びは固定されます。

左右のいずれに引いても結び目は動かなくなります。

 

 


4.負荷テスト

手動ウインチ(レバーブロック)を使い、主索を緊張。

 

 

写真のように約100kgの荷物を空中運搬させ、主索に推定500kgf+αの張力(中央部に来たとき荷質量の約5倍。さらに運搬による衝撃荷重を+α加算)がかかるテストを行いました。

 

 

テスト後の主索の様子。

プルージック結びの中央部(左右の中央側2本分)、および左端1本分のところに強い押圧の跡が見られます。

ウインチによる固定用ロープの牽引は右側からです。

 

巻き数に応じて力が分散すると期待していましたが、等分には分散されず一部に集中する傾向があることもわかりました。

こうした押圧の影響がどのように出るか今後の様子を見届ける必要があります。

 

 


資機材情報

●主索:ダイニーマ製Φ12ミリ

大綱株式会社 SuperMax®ロープ

(参考)破断荷重約17tf 質量9.5kg/100m

 

●固定用ロープ:パラコードΦ8ミリ

ヤマハ発動機 IZANAS

芯材:ダイニーマ 外皮:ポリエステル

(参考)破断荷重約2.7tf 質量12kg/100m

 

●搬器:軽架線用搬器

森の機械 HANAKO A2

(参考)質量12kg(本体、クリップ全てを含んだ質量)

 

●テストで使用した荷

林地残材 約100kg

 

以上