試し張りのススメ
山林の斜面など、道が通っていない所の運搬をこれまで諦めていた方に、ご提案があります。
たしかに山林には、こうした車両が近づけない場所がたくさんあります。
しかし幸い木が生えています。木は運搬の障害にもなりますが、支柱として使えば架線式の運搬を可能にしてくれます。
架線のなかでも一番簡単に始められるのがシンプル架線です。装備が単純で、重機なしでできるのは大きな長所となっています。
シンプル架線を使えばこの視界のどこかから荷を下ろしたり、あるいは反対に山側のほうに荷を上げたりすることができます
この写真の中央から右上に伸びる白いロープをごらんください。これは市販の8ミリの繊維ロープで、試し張りをした様子です。
実際のシンプル架線において張るロープは固定索といい、運搬の範囲と経路を決める基本的なものです。
ここでは運搬の範囲や経路をイメージするために、手軽なロープで代用しています
この固定索を使ってできる運搬は大きく2通りあります。
1つはこの写真のような下りの運搬、つまり下げ荷です。山側にある荷を吊り上げて、谷底の作業道まで下ろすことができます
もう1つはこの写真のような上りの運搬、つまり上げ荷です。谷底の作業道で荷をつり上げ、山側に移動することができます
シンプル架線には、運搬経路の両端に支柱(となる立木)があることが前提となります。
地形によっては、地山の高低差を上手に使い、支柱を設けず切株を端として利用できるかもしれません。
経路が立木に遮られない支柱を選ぶことが大切ですが、見通しのよい経路を見つけるには、現場を歩いてみるのが一番です
力のかかり方によっては(架線がたわみ)、経路の支障となる立木にも目星をつけておくことができます。
運搬時の影響範囲が分かりやすいという点で、試し張りは有意義です
できれば道を跨いで生える木にも目をつけておきます。これを支柱にすれば、荷の上げ下ろしで活躍します。
道を起点に作業を始めると付近を平らげてしまいがちですが、少しは立木を残しておきましょう。
立木は架線の支柱となり、山の将来価値を残してくれます
試し張りのための備品
シンプル架線の可能性を知っていただくには、現場への試し張りが手っ取り早くかつ確実な方法と思われます。
ここで使用したロープは径8ミリの繊維ロープでしたが、とくに指定はありません。
それ以外の備品類をご紹介します。
- プーリー(滑車)×2個 ・・・支柱ごと
- ベルトスリング ×2本以上 ・・・支柱ごと(長さは支柱の径によります)
- シャックル ×2個以上 ・・・支柱ごと
- マーキングテープ
木登りなどの高所作業が発生する場合は、安全帯やラダーなど安全に作業できるものをどうか装備ください
(参考)シンプル架線の索張り
こでは試し張りからシンプル架線の検討を始めていただくことをご提案しましたが、シンプル架線の索張りに必要な主な資機材は、固定索が1本、動索ロープが1本、動力が1個、および搬器が1個です。このうち試し張りで代用したのが固定索となります。
この図は「下り」のシンプル架線の索張りを示します
上りの索張りも下りと同じ資機材をお使いいただけます。つまり構成上の違いはありません。
ただし山側に向かう運搬になりますので、動力を山側に置き、動索と搬器の向きは上り向きに配置するなど、配置上の違いは生まれます
試し張りを行う際、気をつけていただきたいのは安全な支柱(立木)の選び方です。よろしければこちらの動画もご参考ください。
(参考動画)その斜面、シンプル架線で運べます! 放置山林にロープを試し張りしました。運搬経路が見え、支柱のリスクをチェックできます https://www.youtube.com/watch?v=2lUhONB4RuA
00:00 オープニング/導入
01:01 支柱の配置
03:58 固定索の配置
04:05 (先柱側の配置)
04:51 (備品類の紹介)
05:24 (元柱側の配置)
06:04 (経路上の障害)
06:50 安全知識
07:42 (先柱のチェック)
11:00 (危険を減らす工夫)
12:20 (三角関数の早見表)
13:21 (元柱のチェック)
15:10 (張力の働き方)
15:45 (倒す力の計算)
17:04 危険な事例
18:30 メモの残し方
19:20 (計算アプリの使い方)
20:49 まとめ
23:23 シンプル架線の装備
(関連動画)森の機械はシンプル架線の設置・運転に関して様々な動画を投稿しています。よろしければYouTubeの公式チャネルをどうぞごらん下さい。