確実に方向を決めて木を倒したいときは、ロープで倍力のしくみを使って倒します。
ちょっと手数が増えますが、安全かつ確実な方法です。

手前側に作業道があるため、手前側に倒したほうが搬出の手間が多いに省けます。
しかし地形は奥に向かって下っており、伐倒木の重心もやや奥側に倒れているようようです。
伐倒が久しぶりで不慣れなこともあり、最悪奥に向かって倒れては叶わないと思い、ロープを使って倒すことにしました。
一連の作業を動画(2分)でごらんください
手順を詳しく解説します
動画と一部重複しますが、こちらが詳しいです。
実践してみたい方は必見。どうぞご参考ください。

伐倒方向は、手前2本のアンカーの間にします。アンカーとは錨(いかり)の意味です。
このアンカーを支えにしロープを張って伐倒木を倒します。

ロープを巡らす手順はこうです。
①ロープの端を右側のアンカーに固定します
②左側のアンカーのプーリーに通して折り返します
③右側のアンカーに設けた別のプーリーに掛けて
④奥のウインチへ引き回します

そして最後に
⑤2本のロープを掴んで、伐倒木へ向かいます

⑤(続き)2本のロープを伐倒木のプーリーに掛けたら完了
このとき、プーリーは2個使います。
プーリーは合計で4個必要になります。

では伐倒します。
伐倒作業に入る前に、ウインチでロープを緊張させておきます。
緊張させておけば反対方向に倒れる心配がありません。

ツルを残した状態までチェーンソーを入れ、ウインチによる牽引を始めます。

(オペレータは木に隠れて見えませんがウインチのそばにいます)。
これは僅かに倒れ始めた状態。前の写真と比べると違いが分かります。
このとき、倒れ始めることが分かったのでウインチの牽引をすぐに中断しました。
ロープも緩み始めています。

木が2本のアンカーの間に倒れていきました。
係木になることもなく、伐倒方向が狙い通りになりました。成功です。
図で整理いたします
写真と同じ配置で、真上から見た図で整理いたします。

こちらが4倍力のロープ配置です。
①~⑤はそのまま作業の手順になります。
ロープやプーリーの固定には、ベルトスリングとシャックルを使いました。

参考までに2倍力のロープ配置もごらんください。
お気づきかもしれませんが、4倍力とあまり手数が変わりません。
プーリーの数とロープ長に余裕があれば4倍力が安心です。

もう一点、補足します。
4倍力と呼びましたが、正確には4倍力になりません。
この図のとおり、2本のアンカーが開いているため、実際の牽引力は4倍力より少なめになります。
(注)開きすぎに注意
開き角度が120°になると、4倍力は実質2倍力に目減りします。2倍力は実質1倍力に目減りします。
計算式において、cos(120°/2)=0.5 を代入すれば分かります。
以上をふまえ、実践されるときは牽引力に余裕を持たせて伐倒作業を行っていただくようお願いいたします。