危険木をロープとエンジンウインチを使って倒しましたので、一連の手順をご紹介します。この写真は倒れ始めの瞬間で、掛かり木になっているわけではありません。
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計画
危険木は弊社試験林において樹冠を強風でもぎ取られた直径35センチ強のスギです。
この春の強風が原因でした。
このまま放置すると腐りが進んで忘れた頃に倒れて危険なので、今倒すことにしました。
胸高直径が35センチ。このあたりの樹齢は60年を超えています。
実は最近まで気づかず、覚えのない大きな枝が落ちていたので空を見たら気づきました。
枝というより樹冠だったわけですが。落下地点は真下でした。頭が2つに分かれ、付け根のあたりに腐りが入っていたようです。もともと弱っていたところに強風がきたのだと思います。
全体の配置について説明します。
少し大げさに描いていますが、今回倒すスギは少し谷側に傾いています。
普通なら谷側方向に倒すのが無理がありませんが、あいにく谷側が湿地になっており、伐倒後に拾い出すのが厄介と思われたため、山側に倒すことにしました。
つまり重心方向と反対向きに倒すことになるため、今回はロープとエンジンウインチを使って確実に山側に倒したいと思います。
山側の立木2本を支柱にし、ロープをエンジンウインチで引いて、伐倒木を山側に引き寄せるというしくみです。
ロープはプーリーを通して伐倒木に掛け、張力が両側に等しくかかるようにします。伐倒木への取付位置は、テコの効果が働くようなるべく高い位置にします。
するとロープ2本分の張力が合わさって、合力としては張力の2倍分の力で伐倒木を引き寄せることになります。厳密には角度が開くため2倍より小さくなりますが、テコの効果とあいまって確実に倒すことができます
そして伐倒方向は2本の支柱の真ん中方向になります。方向は狙い通りになりますので、あとで検証させていただきます。
内角は危険ゾーンです。チェーンソーによる伐倒作業を始めると、内角のエリアが危険ゾーンになるので、切り始めたらここには入らないよう注意します。
作業や移動は安全な外角のエリアで行うようにします。
設置
まずロープの端を奥の支柱に繋ぎます。ベルトスリングを支柱に巻き、ロープ端のフックを掛けました。
次にロープを伐倒木に掛けます。
今伐倒木にハシゴを掛け、装備一式を持って登っています。装備は、ロープ、プーリー、ベルトスリング、そしてシャックルです。
上から見ると分かりますが、樹冠部は5メートルほどありました。こんな大きな枝が落ちてきたらひとたまりもないでしょう。
伐倒木にロープを掛けるとこんな姿になります。取り付け位置は地上から5m弱のところです。向こう側が谷側、手前側が山側になります。
③エンジンウインチを設置
そして動力になるエンジンウインチをもう一つの支柱に取り付けます。
設置はこれで完了です。
ロープの緩みをとってピンと張った状態で、内角の大きさをチェックしておきます。
これでだいたい100°から110°の間ぐらいでしょうか。
伐倒方向はこの内角の真ん中方向です。ロープで引き倒すので、掛かり木にならない限り狙い通りに倒れます。
倍力の効果は?
参考までに角度が狭いほど倍力の効果が働いて倒しやすくなりますが、逆に角度が開いていくと段々と倍力の効果が薄れます。目安は120°つまり中心線が60°になると単引きで引く力と同じになります。そして広がり過ぎると伐倒方向が中心からぶれやすくなるので注意します。
伐倒
切り口をマーキング
分かりやすいよう切り口をマーキングしました。自分も久しぶりなので慎重に進めたいと思います。
左側が受け口で最初に切る方です。木こちら側に倒れます。
右側の水平線が追い口で、後から切り入れます。
ツルは厚めにしています。
追い口と受け口の間の幅のことをツルいいます。追い口を深く切ってツルを薄くすると木は自然に倒れますが、今回はロープの張力を使いますので、ツルを厚めに残します。
ではロープを緊張させて木をぐいと山側に引き寄せておきます。
エンジンウインチを動かしてロープを巻き取ればロープが緊張していきます。
若干ですが木が山側にしなったことが分かりましたでしょうか。
緊張前と緊張後を比べてみます。
本当にわずかですが、背後の木との位置関係を見ると伐倒木が山側に引き寄せられているのが分かります。
ロープの緊張を保った状態で、これからチェーンソーを動かします。
まずは受け口から切ります。
チェーンソーはスチールMS261Cを使用しています。排気量は50CC、ガイドバー45センチです
次に追い口を切ります。
今回は追い口を深入りさせず、ツルを厚めに残す予定です。
ある程度切り進むと、ロープの張力によって切り口が少し開いていきます。山側に倒れ始めた証拠です。実際、幹が山側にほんの少し引き寄せられているのが分かります。
チェーンソーの作業はここで終わりです。
この後はチェーンソーではなく、ロープで引き倒します。
エンジンウインチをスタートしてロープを牽引します。
安全のため、少し離れたところからロープを引きます。
引き続けると倒れ始めます。ツルが厚いせいか、ミシミシっとツルが破断する音が普段より大きいです。
これが倒れた瞬間です。
樹冠がなく幹だけになっていたので、地面に激しく倒れてバウンドしました。
このバウンドの衝撃でツルが完全に外れたようです(右上の拡大写真)。
ツルを厚めに残すと申し上げたとおり、10センチ近くありました。
これだけ厚くても倒れてくれたのはロープで引いたおかげです。
裂けずに倒れてくれたのは幸いでしたが、この木がまだ水分の多い生木の状態にあることを示しています。
枯れて水分が抜けると、裂ける心配があります。
幹は90°回転して切株の上に。(意図的に回転させたわけではありません)
ツルは完全に外れています。
伐倒方向を検証します。
伐倒方向が2本の支柱のほぼ真ん中に向かっていることがよく分かります。
樹冠部がほぼ無くなっているために、立木にぶつかっても掛からずに素直に倒れてくれました。
参考までに、手前が樹冠の折れた部分です。芯が黒ずんでおり、やはり腐りが入っていました。
この木は後日運び出します。作業道の上に浮いてくれたおかげで少しづつ切って運びたいと思います。これも山側に倒す狙いの1つでした。
使用した道具
●使用した道具
チェーンソー:排気量50cc(スチールMS261C)
エンジンウインチ:排気量50cc(フォレストサプライVF-80)
繊維ロープ:ダブルブレードΦ10×100m
以上です。
危険木をロープとエンジンウインチを使って倒した一連の過程をご紹介しました。
