ほどよい倍力の数を知るための早見チャートを作りました。
EyeEyeを使って2倍力、3倍力、4倍力を実施するときにご活用ください。
ほどよい倍力の数は、一括りに決められません。
それは、端(はな)上げの状態が、地形(傾斜の大きさ)と、荷の重さによって変わるためです。
では端上げの状態が変化するのはどうしてでしょうか?
原始的な方法ですが、倍力を使わず(単力で)動索を引いてみるとその理由が分かります。
実際、動索を引くと搬器がウインチ側に移動してしまいます。
この現象を「搬器が逃げる」と言います。
「逃げる」=搬器が真上から居なくなってしまうことで、荷を真上に引く力が弱まってしまうのです。
このように搬器が逃げる現象は当たり前におきる物理現象で、「逃げ角」で示すことができます。
逃げ角とは、鉛直方向からの搬器の傾きです。
この逃げ角は、端上げができるかどうかを決める重要な角度です。
単純にいえば、
しかし逃げ角がゼロ(やマイナス)になると荷が宙吊りになってしまい、やっかいな問題も生まれます。
つまり逃げ角を「小さなプラス」になるようにすることがキモだということになります。
では逃げ角を小さなプラスにコントロールするにはどうしたら良いでしょうか。
逃げ角を決める要因は3つあります。
このうち傾斜は地形条件ですから変えようがありません。
変えようがあるのは、倍力の数と荷の重さです。
そこで早見チャートを用意させていただきました。
このチャートが示す3つのゾーンのそれぞれの意味は以下のとおりです。
黄色ゾーン:端が上がらない地引き(逃げ角が大きすぎる)
青色ゾーン:端が上がる地引き(逃げ角が小さなプラス)
赤色ゾーン:宙吊りになる(逃げ角がゼロまたはマイナスになる)
このチャートは、
に作成していますので、該当するチャートを見れば、
黄色ゾーン・青色ゾーン・赤色ゾーンの傾斜の範囲が分かります。
ただし荷の重さについては、逆数をとって
r=搬器の質量/荷の質量
として、横軸に表しています。
例えば搬器EyeEyeの質量は8kgです。
荷が160kgのときはr=0.05になります。
荷が400kgのときはr=0.02になります。
そして青色のゾーンのうち、お勧めの区間は両矢印(↔)で示した区間です。この区間は「端がしっかり上がるけど、宙吊りにはならない」効果的な端上げが起きるからです。
1倍力のときは、傾斜が20°以上でないと端が上がりません。
しっかりと端が上がった状態を確認できるのは、傾斜が30°以上のときです。
また1倍力のときは他の倍力のときに比べて、
rの大きさの違いが端上げに大きく影響することが分かります。
このことは、搬器を重くすれば端が上がりやすくなることを示しています。
2倍力は、とくに傾斜が20°~30°のときに効果的な端上げ効果が起きます。
ただしrが大きい(荷が軽い)ときは、30°近くの傾斜では宙吊りになるリスクがありますので注意が必要です。
3倍力は、とくに傾斜が10°~20°のときに効果的な端上げ効果が起きます。
ただしrが大きい(荷が軽い)ときは、20°近くの傾斜では宙吊りになるリスクがありますので注意が必要です。
4倍力は、とくに傾斜が4°~14°のときに効果的な端上げ効果が起きます。
緩傾斜のときのみに有効なので、あまり使うシーンはないかもしれません。
ただし4倍力の魅力は力強さです。
横取りを力強くする場面では活躍できると思われます。
以上のとおりですが、これらの早見チャートは参考ていどに留めるようにお願いいたします。
というのも、早見チャートが示す傾斜角は、固定索の傾斜角として算出しています。
地山の傾斜角をみれば、たいていはそれが固定索の傾斜角を指していると考えて良いかと思いますが、実際の場面では、固定索が垂下することによって、傾斜角は上振れします。
傾斜が大きくなると逃げ角は小さくなりますね。
すると端がいっそう上がりやすくなり、場合によっては宙吊りにさえなります。
ということで、青色ゾーンにあっても赤色ゾーンに近い傾斜だと、宙吊りになるリスクがあります。
くれぐれも運転し始めに端上げの様子を確認して倍力の数を確認するようにしてください。